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横浜地方裁判所 昭和34年(ワ)605号 判決 1961年12月21日

原告 国

訴訟代理人 館忠彦 外三名

被告 若葉運輸株式会社

主文

被告は原告に対し金一五四、四九九円及びうち金五八、九七八円に対する昭和三一年一二月二五日より、残金九五、五、二一円に対する同年同月二六日より、それぞれ完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その二を原告、その余を被告の負担とする

この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

原告指定代理人は、「被告は原告に対し、金四四七、三五八円および内金五八、九七八円に対する昭和三一年一二月二五日より、内金三八八、三八〇円に対する同年同月二六日よりそれぞれ支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決と仮執行の宣言とを求め、その請求原因として、

「一、被告は、自動車運送業を営んでいる会社であるが、昭和三一年八月一八日午後二時四〇分頃被告の使用人である自動車運転者訴外外木信幸(以下外木と略称する。)が被告所有のマツダ五五年型小型三輪自動車(神第六-五一二二八号。以下被告三輪車と略称する。)を運転して、横浜市磯子区磯子町一三番地先一級第一六号国道を同市同区杉田町方面から八幡橋方面に向けて進行中、その進行方向の左端に位して同所道路上に停車していた他の三輪自動車(神第六-一九二〇五号。)の右後部ボデー部分に被告三輪車の左前部の方向指示器およびボデーならびに助手席手掛の各部分を追突せしめた。

二、右の衝突事故によつて、被告三輪車の助手席に同乗していた訴外今井史郎(以下今井と略称する。)は左第二、三、四各手掌骨開放性骨折、右手掌挫創、右前膊部挫傷、左大腿部挫創等治療二ヶ月を要する傷害を蒙つた。

三、右の衝突事故による傷害のため今井は次の損害を蒙つた。

(1)  二に記載の傷の治療のため

(イ)  昭和三一年八月一八日から同月二四日まで関東病院に入院治療を受けその間の医療費金九、一二〇円を、

(ロ)  同年同月二五日から同年一一月末日まで横浜市立大学医学部病院において治療を受けその間の医療費金五八、九七八円を、

(ハ)  右期間中の同年九月一〇日から同年一〇月一三日までの間に通算三四日間同病院で附添看護婦を必要としたのでその看護料合計金一九、三八〇円を

それぞれ要した。

(2)  今井は事故当時訴外株式会社玉井工務店(以下訴外工務店と略称する。)に勤務し、昭和三一年四月二六日から同年七月二五日までの九一日間には毎月金一九、〇〇〇円、一日平均金六二六円三七銭の給与を受けていたが、右負傷のため同年八月一八日から同年一二月三一日まで休業し、うち同年九月一六日から同年一二月三一日まで計一〇七日間全く収益がなく合計金六七、〇二一円の損失を受けた。

(3)  今井には右治療後においてもなお左記のとおりの障害が残存している。

(イ)  左腕関節-強直性を呈し、自動運転殆んど不可能、内方に変形。程度は用廃に達している。

(ロ)  左栂指-内転位をとり、強直、程度は用廃に達している。

(ハ)  左第二ないし第五指-伸展屈曲制限著名、緩漫な可動僅に可能な程度。程度は用廃に達している。

そのため、今井の労働能力は従前に比し著しく減少するに至つたので、このために喪失する得べかりし利益の額はホフマン式計算法に準拠して計算すると金一、九九〇、五二七円となる。

即ち

(イ)  平均余命年数(Y)-今井は同年一二月二日当時三一才であつたが同二九年七月厚生省発表の第九回生命表によるとYは三七・〇五年である。

(ロ)  労働能力の喪失程度(P)-今井の前述残存障害の程度は労働基準法施行規則別表第一・身体障害等級表によると第六級に相当し労働能力は六七パーセント喪失したものとされるから、Pは六七パーセント=〇・六七とするのが妥当である。

(ハ)  一日当りの平均賃金(W)前述のとおり六二六円三七銭である。

(ニ)  法定利率(r)年五分=〇・〇五、とすると喪失額は

<計算式 省略>

となる。

(4)  仮に(3) の損害が認められないにしても今井は訴外工務店において主として設計、現場監督の業務に当つており、前記残存障害のため左手首は全く曲らず、左手指は開けない現状で寒期には痺を催おしマツサージ治療の甲斐もなく職務上も日常生活上もあらゆる面で不便を生じ精神的にも莫大な損害を蒙つたものでその額は少くとも三八八、三八〇円を下らない。

四、今井の蒙つた三に記載の各損害は、被告が自己のために運行の用に供する被告三輪車の運行により今井の身体を害したことによるもので、被告は、自動車損害賠償保障法第三条によつて今井に対しその損害を賠償すべき義務がある。

五(1)  今井は、本件事故当時訴外工務店の一級建築士として同店の請負つた金沢文庫小学校増築工事の現場監督に従事していたもので当日は右工事に必要な建具類の修理のため訴外菅沼建具店までこれらを運搬する必要があつたのでこれを被告に依頼し急を要したために外木の運転する被告三輪車の助手席に同乗し右建具店に赴く途中本件事故に遇つたもので今井の負傷は業務上の負傷であるから原告は労働者災害補償保険法(以下労災法と略称する。)の規定にもとづき所定の災害補償費を今井に給付することになつた。

(2)  原告が労災法に従つて今井に給付すべき災害補償費の内訳は次のとおりである。

(イ)  療養補償費(同法第一二条、第一三条) 金八七、四七八円

(ロ)  休業補償費(同法第一二条) 金四〇、二一二円

(ハ)  障害補償覆(同法第一二条、同法施行規則第一五条別表) 金四一九、六六八円

今井の前記三、(3) 記載の残存障害は同法施行規則第一五条第一項障害補償費別表によれば右障害のうち腕関節および五指の用廃はいずれも第八級に該当し、同条第三項第二号によつて二等級繰り上げて第六級と認定されるから、労働基準法第一二条によつて算出される今井の平均賃金六二六円三七銭の割で六七〇日分を支給すべきことになる。

(3)  今井は、自動車損害賠償保障法によつて金一〇〇、〇〇〇円の保険給付を受けたので、右(2) の金額の合計額から右金一〇〇、〇〇〇円を控除した金四四七、三五八円を労災法補償による給付額と決定し(療養補償費のうち三、(1) 、(イ)および(ハ)の費用合計金二八、五〇〇円、休業補償費の全額、障害補償費のうち金三一、二八八円をそれぞれ控除)そのうち金五八、九七八円を昭和三一年一二月二五日に、うち金三八八、三八〇円を同年同月二六日にそれぞれ今井に支給した。

六、それ故、原告は労災法第二〇条に基づいて今井に対する右支給額の限度で今井が被告に対して有する前述四の損害賠償請求権を取得した。

よつて原告は被告に対して右金額の支払およびうち金五八、九七八円については昭和三一年一二月二五日から、うち金三八八、三八〇円については同年同月二六日から右完済に至るまで年五分の割合の遅延損害金の支払を求める。」と述べ、なお、被告主張の事実中、六五〇号通牒については、従前は同通牒に従つて被告陳述のとおりの取扱いがなされていたが、その取扱は事情に添わないとして、昭和二九年一月二六日付基発第三七〇号の通牒によつて訂正されたもので右の規定はこの例によつたもので適法である。また、本件事故発生に関し、今井に過失があるとの点は否認する。乗車中手掛に掴つて身体の安定を保つのは当然のことである。また労災法による保険給付金には慰藉料を含んでいないことは認めるが、同法第二〇条の趣旨は国が保険給付をすることによりその金額の限度において被害者の慰藉料請求権をも含めすべての損害賠償請求権を国に取得きせようとするものである。と述べ証拠<省略>、

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の、負担とする」との判決を求め、答弁及び抗弁として

「一、請求原因第一項の事実は認める。

二、請求原因第二項中、訴外今井の負傷部位および程度は不知、その他は認める。

三、請求原因第三項(1) の事実は不知。同(2) は否認する。その賃金中には物価手当なる臨時的なものがありこれを平均賃金算出の基礎に加えるのは不当である。同(3) の事実は否認する。(イ)および(ハ)の各部位はいずれも用廃(関節の運動可能領域が生理的運動領域の二分の一以下に減じた場合の謂である。)に達していない。右各部位が用廃に当るとしても右は同一部位の障害であつて通例(イ)は(ハ)を伴うものであるから重い方の障害によつて等級を定めるべきであつて両者の併合取扱いは許されず右の場合は第七等級に相当するものである(昭和二七年七月四日労働基準局労災補償部長通牒第六五〇号。)

又Pについては、今井の業務の性質上右残存障害によつては労働能力従つて収入は減少しない態のものであり現に今井は事故前のとおりの収入を得て働いている。同(4) の事実は否認する。精神的損害の賠償請求権は労災法の補償の範囲外でありもとより国に移転するものではない。

四、請求原因第四項の事実は否認する。今井は貨物自動車たる被告三輪車の助手席に同乗したもので運転補助者であるから自動車損害賠償補償法第三条にいう「他人」には該当しない。

五、請求原因第五項(1) の事実は否認する。労災法にいう業務上の事由による負傷とは労働者が当該事業主の業務関係に活動しているときに、その事業に通常伴う危険から生じたものをいうと解すべきところ、今井はその業務の出張途上特別の事由なく被告三輪車の助手席に同乗したもので通常の事業主ならば禁止する行為であるから業務を逸脱した行為であり、社会通念上相当と認められる交通機関によつたものといえないから全くの私的行為である。又今井の業務の性質上第三者の行為による事故の危険性は殆んど存在せず、本件負傷はその業務に起因しない偶発的なものである。右のようにいずれにせよ今井の負傷はその業務上生じた負傷とはいえない。同(2) の事実は否認する。原告のなした給付は左の理由で違法ないし不当である。(イ)後述のように今井に重大な過失があるのに労災法第一九条による給付制限をしなかつた。(ロ)前述のように平均賃金の算定基礎に物価手当なる臨時的なものを加えている。(ハ)同じく残存障害はいずれも用廃に達せず、第八級に該当しないのに拘らずこれを認めた。(ニ)仮に第八級に該るとしてもこれを併合して、前述のように第七級とすべきなのに第六級とした。

六、請求原因第六項の事実は否認する。

七、今井は五に前述のように本来乗車すべきでないのに強いて乗車し、しかも元来運転者と同等の運転資格を有するかあるいはこれを完全に補佐し得る者が乗車すべき助手席に乗車し、その上このようにいやしくも助手席にある者は常に前方を注視して運行上障害のあることを発見したときはこれを運転者に注意すると共に本件のような事故に際しては危険防止および避止の適宣の処置をとれるよう注意していなければならないのに、放心又は居睡り状態で漫然助手席手掛を左手で掴んでいた結果本件傷害を蒙つたものぞあるからこれには重大な過失があつたというべく、損害額の算定について斟酌されねばならない。」と述べ、

証拠<省略>

理由

一、被告は自動車運送業を営む会社であるところ、原告主張の日時場所において、被告の使用人である訴外外木信幸が被告三輪車を運転中、同所道路上に停車していた他の自動三輪車の後部ボデーに、被告三輪車の左前部の方向指示器ならびにボデーおよび助手席手掛の部分を追突せしめ、よつて被告三輪車の助手席に同乗していた今井の身体に障害を負わしめたことは当事者間に争がなく、今井が右衝突によつて受けた傷害の部位、程度は左第二、三、四、五中手骨、拇指複雑骨折、右手掌挫創、右前膊部挫傷、左大腿部挫創等治療約二ヵ月を要するものであつたことは証人今井史郎の証言および成立に争のない甲第四号証、同第五号証の一ないし四によつてこれを認めることができる。

二、右事故につき今井が自動車損害賠償補償法第三条によつて損害賠償請求権を取得すべき「他人」に該当するか否かにつき考えるに、証人今井史郎の証言によれば、今井はその勤務先である株式会社玉井工務店の現場監督として、本件事故当日、金沢文庫小学校増築工事の監督に当つていたが、竣工検査も一両日中に迫つたので右工事に必要な建具の不備な部分の修理をきせるため工事現場より建具を積んで被告三輪車に菅沼建具店までの運搬を依頼したが、建具店に修理個所を指示するため同乗した事実が認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。右認定事実によれば、今井は運転補助者ではなくいわゆる「他人」と解するのが相当であり、被告は前示事故によつて今井の被つた損害を賠償すべき義務あるものというべきである。

三、被告は今井にも過失があると主張するのであるけれども今井が本件事故当時、放心又は居睡り状態であつたとの被告主張は、本件全証拠によつてもこれを認めることができない。そして証人今井史郎の証言および成立に争のない甲第三号証の一によれば、本件事故当時、今井は走行中の被告三輪車の助手席にあつて左手で助手席手掛をつかんでいたものであるが、約二、三〇メートル先方に停車中の自動三輪車を認識したが被告三輪車が当然これを避けて通行するものと考え特に危険とは感じなかつたところ、ハンドルが右に切り切れなかつたため被告三輪車は停車中の三輪車に接触したことが認められ、右状況の下では今井にとつて本件事故は全く突発的なものであつて事故の瞬間今井が手街を離さなかつたことは無理からぬところであり、今井に過失ありとは到底認め難い。よつて被告の過失相殺の抗弁は排斥を免れない。

四、よつて進んで損害額について考えるに、

(1)  治療費-成立に争のない甲第五号証の一ないし四および証人今井史郎の証言ならびにこれによつて真正に成立したと認められる甲第一〇号証の一ないし三、第一一号証によれば、今井は(イ)前示負傷のため昭和三一年八月一八日より同月二七日まで関東病院に入院治療しこれに医療費金九、一二〇円を支払い、(ロ)さらに同年八月二五日より同年一一月三〇日まで横浜市立大学医学部病院において入院および通院して治療を受けてこれに医療費金五八、九七八円を支払い、(ハ)同病院に入院中同年九月一〇日から同年一〇月一三日まで附添看護婦を必要としたためその看護料金一九、三八〇円を支払い、以上(イ)から(ハ)までの合計金八七、四七八円を要した事実が認められる。

(2)  休業による損失-証人今井史郎の証言およびその方式および趣旨により真正に成立したと認めるべき甲第六号証の一、甲第一二号証によれば、今井は事故当時訴外工務店に勤務し、同人の給料は月額金一九、〇〇〇円、平均日額金六二六円三七銭を得ていたものであるところ事故のため事故当日から同年一二月末日まで休業のやむなきに至り同年九月一六日より同年末までの一〇七日間全く給与を受けなかつた事実が認められるから、同人はその間の賃金合計金六七、〇二一円の得べかりし利益を失つたと認められる。(なお被告は平均賃金算定の基礎には物価手当を加えるべきでないと主張し、前出甲第六号証の一によれば、前示給料月額金一九、〇〇〇円の内訳は基本賃金九、〇〇〇円、物価手当一〇、〇〇〇円とされていることが認められるが、同号証によれば、今井は右同額を事故以前三ケ月間引続いて支払を受けていることも認められるのであつて、労働基準法第一一条および第一二条において、賃金とは賃金、手当その他名称の如何を問わず労働の対価として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうとし平均賃金とはこれを算定すべき事由の発生した日以前三ケ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額をいうと定めてある点に徴しても右主張はとることができない。)、今井は以上(1) (2) の合計金一五四、四九九円の損害を蒙つた。

(3)  労働力の減少による損害-その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第八号証、および証人今井史郎の証言によれば今井には左手の関節と左手の五指関節に後遺症が存在し(左腕関節は強直し内方に変形、自動運動殆んど不能、左栂指は内転位をとり強直、左第二ないし第五指は伸展屈曲制限著明、緩慢な可動僅かに可能な程度)このため今井は洋服のボタンなどは自身では掛けられず、茶椀を持つにも不自由し、自転車のブレーキを締めることもできないことが認められ、右認定によれば左腕関節、左寺の五指関節はいずれもいわゆる用廃に達していると認めるのを相当とすべく、この残存障害の程度は労働基準法施行規則別表第一、身体障害等級表および昭和二九年一月二六日付基発第三七号通牒によると第六級に相当すると解せられ、今井がそのため労働能力を若干喪失したことは窺いえられるけれども、原告主張のように六七パーセント喪失したとのことは、これを認むべき適確な証拠がなく、しかも証人今井史郎の証言によれば、今井は一級建築士であつて直接肉体労働に従事するわけでもなく、その後前示の後遺症によつて給与上別に不利な差別待遇を受けていないことが認められるから、この点について同人に財産上の損害を生じたとは認められない。

(4)  精神上の損害-今井が前認定のとおり本件事故の結果負傷し、その後遺症が現存し、日常生活上多大の不便を感じているものであることにより精神上の苦痛を受けていることは容易に推認しうるところであるけれども、後に示すとおり精神上の苦痛に対する損害賠償請求権は原告に移転するものではないと解されるから、その損害額についての判断はこれを省略する。

五、つぎに原告が今井に対し療養補償費として前示四(1) の治療費金八七、四七八円のうち(ロ)の金五八、九七八円および障害補償費として四(3) に記載の金額のうち金三八八、三八〇円、合計金四四七、三五八円を労災法補償による給付額として決定し、そのうち、金五八、九七八円を昭和三一年一二月二五日に、うち金三八八、三八〇円を同年同月二六日にそれぞれ今井に支給したことは前出甲第六号証の一およびその方式および趣旨によつて真正に成立したと認められる甲第六号証の二によつてこれを認むべく、右事実によれば原告は右金四四七、三五八円の限度内である今井が被告に対して有する前示金一五四、四九九円の損害賠償債権およびこれに対する右取得の日以後の年五分の割合による遅延損害金の債権を取得したというべきである。原告は原告が今井に保険給付として支払つた金額の限度内においては今井の有した精神上の損害に対する損害賠償請求権をも取得したと主張するけれども、右の保険給付金に慰藉料が含まれていないことは原告の認めるところであり、しかも慰藉料請求権の一身専属的性質と合せ考えるときは労災法第二〇条により国が取得すべき損害賠償請求権は慰藉料請求権を含まないと解すべきであつて、原告の主張は理由がない。(なお被告は原告のなした給付決定は違法ないし不当である旨主張するが、右決定は行政処分であるから、これに重大且つ明白な瑕疵の存しない限り、裁判所もこれに拘束せられるもの解すべきところ、被告主張自体から右決定の瑕疵が明白重大であることは認むべくもないから、右主張は証拠によつて判断するまでもなく失当である。)

六、従つて本訴請求中被告に対し金一五四、四九九円および内金五八、九七八円について昭和三一年一二月二五日から、内金九五、五二一円について同年同月二六日からそれぞれ完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当としてこれを認容すべく、その余は失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九二条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋栄吉 吉岡進 高木典雄)

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